物語の形をした「主体的な部活動」の解説書
スポーツ教育学を専門とする研究者による〈主体的な部活動〉の解説書です。
どうやって課題と向き合い、組織作りをし、大人たちを巻き込んでいくか。「こんなふうにできれば最高だね」という部活動の方法を物語の中に落とし込み、具体的に説明していきます。
物語は、架空の中学校、深津市立南中学校の男子バレーボール部が、廃部の危機に直面するところから始まります。
~学校全体で部活数を減らすことになったんだよ。
~体育館もいっぱいだろ。
~顧問が3月で退職するし、部員数も少ないからね、男子バレーボール部は。
学校からの廃部通告に納得できない生徒たちは、部活存続のために自ら部活動改革に立ち上がります。
顧問の退職、部員数の不足、活動時間・場所の制限など、学校側から指摘された課題一つひとつに自ら取組んでいく中学生。
彼らの取組みを導いたのは、地域のスポーツクラブにも関わっている体育教員(サッカー部顧問)や、女子バレーボール部顧問からのアドバイスや、スマホでのネット検索などです。廃部の決定を下した校長先生も、国のガイドラインなどを教えてくれる役割を、物語上、担っています。
たとえば、指導者に頼り切らない、主体的な部活動に不可欠な役割分担は、
①練習・試合、
②組織・集団
③場・環境
と3つの積木(課題)をもとに、それぞれのリーダー(①「キャプテン」、②「部長」③「環境リーダー」)を決め、係を設定。全員が部の運営に関われる仕組みを作っていきます。
週1のミーティングの他、LINEで密に連絡を取り合うところは、令和の中学生ならでは。
一つひとつ課題を解決しながら物語は進んでいきますが、1章ごとに書かれているまとめ=「ブカツのヒケツ」が、著者による解説部分になっています。
作中に描かれている部活改革の内容は非常に高度で、高校生でもここまでできたら超優秀と思わなくはありません。中学生の親からすると、「ミーティングに出す原案やワークシートをこんなにスムースに用意できるのなら、勉強でも苦労しないのよ!」と叫びたくなるところでしょう。
しかし、ここまではできないにしても、部活動は、やりかた次第で、10代の子どもの思考力を鍛え、協働力を養い、主体性を獲得していく、貴重な機会になることは、大人として親として知っておきたいことかもしれません。
巻末には、実際の部活動運営の役に立つクラブ・インテリジェンスワークシートが付いています。部活でリーダー職を務めている中高生は参考にできる嬉しい付録です。